滞ル専用

曹閧
【Rain(第一章)暗闇の中の光】

「ん〜今日もいい天気!」



彼女は大きくのびをした。




「言ってきまーす!!」




元気良くドアを開け、家を飛び出した。




空には雲一つない快晴。



彼女の元気良い声が乾いた空に少しだけ響いた。



そう、彼女の名前は白愛(はくあ)
中学2年生で、友達からも、家族からも愛されていた。





平日は学校に行って、夜は家族と過ごす。



平日は友達と遊んだり、お母さんとショッピングに行ったり・・・そんな普通な事がすごくすごく幸せだと思っていたんだ。




「おはよー!!!」



「あ、白愛!おはよぉ。」



「白愛〜!今日うちらの列、数学当たるよっ。やってきた?」



「えー!!やってないっ。」



「だと思ったー。」



「何それ、あはは。」


白愛は「こら。」と殴るマネをした。



キーンコーンカーンコーン・・・




その時授業の始まりを知らせるチャイムがなった。



「やばっ。」



「全員席につけー!」



先生が入ってきて、大きな声で言った。



毎日、同じ事の繰り返し・・・。



白愛は苦手な数学の時間にボーッと窓をながめていた。



「あ〜あ・・・こんな空、キレイなのに・・・授業、つまんなぃなぁ。」


と、ポツリとつぶいやいた。



「木村!!きむらぁ!!」



しんと静まりかえっていた白愛の耳に、先生の声が飛び込んできた。



「はい!」



白愛はあわてて席を立った。



「ここの問、やってみろ。」




心の中で(キタよー・・・)と思いながらも仕方なく問題を解いた。



(案外、簡単。いけそうかも。)



「はい、正解!戻っていいぞ。」



「はーい。」





こんな光景も毎日の様に続いていて・・・
『普通』がつまらなくなっていたんだ。





幸せな事なのにね。





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曹閧




「別にいいよ、こんな傷。どうせすぐに治るし。」




そう言って向こうを向いてしまった。




白愛は勇気をふりしぼる。



「あ・・・あの!私、木村白愛っていうんです!傷・・・見せて下さい。」




ひざの上においた手が、少しだけ震えた。




男の子はゆっくりとこっちを見た。




「なんで手当てとかすんの??」




しっかりと白愛の目を見て、言った。




「なんでって・・・放っとけないんです。ホラ!!見せて!!」




白愛は少し強引に腕を引っ張った。




ほどよく筋肉がついていて、しっかりとした腕だ。




てきぱきと白愛は手当てをしていく。




「ありがとな。」




本当に本当に小さい声だったけど、白愛にはちゃんと聞こえた。




ブロロロロ・・・・・・・・・・ロロロッ・・・・・




遠くからバイクの音が聞こえた。





「その音を聞いたかと思うと、男の子が立ち上がった。




「あ、あの・・・・・?」




問いかけると、数秒たってから返事が返って来た。




「手当てどーも。白愛チャン。」




風が吹いてきて、男の子の髪が少しだけ揺れた。




白愛は、名前を覚えてくれたことに少しだけ嬉しさを感じていた。




男の子はそう言うと歩き出した。




「帰るんですか?」




声が少し大きくなる。




「決着つけねぇとな。俺、豪(ごう)っつーんだ。まあ、もう会わないと思うけど。」




豪はそう言うと暗闇の中に消えてしまった。






白愛は1人残されて、なぜか急に寂しい気持ちになった。




「わんわんっ。」




イチゴが白愛に寄り添う。




「ゴメンねっ。イチゴがいたね!」




白愛は立ち上がった。





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曹閧

「うわー。振ってきちゃった・・・。」




放課後、学校を出ようとすると、雨が降っていた。


まだ、小雨程度だ。




(走ろう)



そう思って白愛は帰り道を急いだ。




ガチャッ




「ただいまぁ。」




玄関を開けると、愛犬のイチゴがお出迎え。




「イチゴー!ただいま!!」




イチゴはミニチュアダックスフンド。




その小さい口に散歩用のリードをくわえ、シッポをしきりに振っている。




白愛にはすぐにその意味が分かった。




「イチゴ、ごめんね。今、雨降ってるから・・・。」



『散歩はいけない』と言おうとしたが、ここは飼い主バカ。




「・・・ちょっとだけだからね。」




白愛はイチゴからリードを取りイチゴの首輪につけた。




イチゴは大はしゃぎだ。




白愛はスクールバッグを玄関先に置き、傘を取った。



「いこっか!」




白愛が玄関を開けるとイチゴは『ワン!』とほえ、勢い良く飛び出した。




雨はさっきよりだいぶ降っていた。



「イチゴっ!そんな走んないで;;」



イチゴはぐいぐいと白愛を引っ張っていく。




雨のせいで雲は暗く、周りには街灯の光が目立っているくらいだった。




イチゴは近くの公園に入った。




と、入った瞬間イチゴは急に走り出した。




白愛は思わずリードを離してしまう。




「イチゴっ!」




イチゴは奥のベンチの方へ走って行ってしまった。




仕方なく白愛は追いかける。




やっとイチゴが見えたと思ったら、ベンチの上で誰か寝ている。




イチゴはその人の周りをぐるぐる周っていた。




白愛は近づいてみてびっくりした。




公園の街灯に照らされて、はっきりと見える。




ベンチの上で寝ている人は、制服だろうか、ワイシャツの前を開けて、その下にTシャツを着ている。




でも・・・血でそまっている。




顔や手にも殴られた後があった。









「あの・・・」




白愛はうるさい心臓を押さえながら問いかけた。




・・・だが、返事はない。




白愛は急に怖くなってきた。




血だらけの制服、傷だらけの体・・・。




止むことなく降り続いてる雨が、白愛の髪を濡らしていく。




「あのっ!」




さっきより大きな声で言って、男の子の体をゆすった。




「・・・・・ってぇ。」




白愛にはかすかに聞こえた。




男の子は、体をのそっと起き上げた。




ぬれてペシャンコになった髪が、白愛の心臓をもっと早くさせた。




「誰?」




一言、男の子が言った。




雨は止むことなく降っている。




白愛は傘を男の子に渡した。




「待ってて!」




そう言って、家に向かって走った。




傘を渡されたまま、意味が分からなくて、頭をポリポリとかく。




「ワンワン!」




足元に犬がいる。




「お前、アイツの犬か?」




そう問いかけた。イチゴはしっぽをブンブンと振っている。




軽くイチゴの頭をなでて、立ち上がろうとする。




「いってぇ!」




全身に走る痛みに耐えられず、その場に倒れこんだ。




「・・・・・・・・・・俺、何してんだ・・・・・」




ぽつりとつぶやいた時、近くに人の気配を感じた。




「大丈夫ですか?」




白愛がタオルと救急箱を持って、戻って来た。




「と、とりあえず移動しませんか?」




白愛は何も言わない男の子の腕をひいて、屋根のある所に移動した。




今はもう、閉まっている雑貨屋だ。



2人は地面に腰をおとした。




「傷、見せてもらっていいですか?」




おそるおそる問いかけた。






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